目次
はじめに
今回は「状態方程式」が登場します。
「状態方程式」は、あらゆる条件下での気体の状態(温度・圧力・体積など)を知ることができる魔法の等式です。
状態方程式を扱うにあたって、「理想気体」と「実在気体」の2つに分けて説明します。
本記事では、理想気体の状態方程式について確認していきましょう!
状態方程式とは
早速、本質的なお話をしてしまいましょう。
熱平衡状態にある気体や液体の系では、圧力Pは、系の温度Tと数密度ρを使って表すことができます。
ちなみに「数密度ρ」は、「単位体積あたりに粒子が何個あるか」を表す量です。
系の粒子数をN、体積をVとすると、次のようになります。
例えば、60㎥の部屋の中に、スギ花粉が300000個あるとします。
この時の部屋の中のスギ花粉の数密度ρは、
$$\rho = \frac{300000}{60} = 5000$$
つまり、5000個/㎥となります。
花粉症持ちの私としては、考えただけでかゆみと悲しみの涙が出ます。
※ちなみに、天気予報など実用上は、単位面積あたりの花粉の個数で判断されています。
冗談はさておき、このように、普段私たちが使う密度は、g/㎤など「質量」を「体積」で割ったものですが、数密度は「数」を「体積」で割っているのが特徴です。
さて、数密度について知った上で、最初の行で述べた、
「熱平衡状態にある気体や液体の系の圧力Pは、系の温度Tと数密度ρを使って表すことができる。」
という内容を数式で表すと、次のようになります。
この圧力・温度・数密度の関係式を「状態方程式」と呼びます。
この式では、P, T, ρのうち2つが分かれば、残りの1つも分かります。
ここでは、関数fを使って表現していますが、適用する対象を簡単なモデルにすることで、具体的な形に書き直すことができます。
そのモデルが、次に述べる「理想気体」です。
理想気体の状態方程式
理想気体は、次の2つの特徴を持つ気体のことを言います。
理想気体の特徴
- 粒子が大きさを持たない
- 粒子同士が相互作用しない
現実に存在する気体はいずれも粒子に大きさがあり、粒子間の相互作用が存在するため、理想気体ではありません。
その中でも、理想気体に最も近い気体が「ヘリウム(He)」です。
空気と一緒に口に含むと声が高くなるパーティーグッズで有名なガスですね。
ヘリウムは水素の次に小さい原子であり、相互作用が非常に小さいため、理想気体に近い振る舞いをします。
また、非常に薄い気体(希薄気体)も、理想気体に近い性質を持ちます。
これは、粒子同士がとても離れていることで、粒子同士の相互作用が小さくなるためです。
さて、この理想気体では、圧力P, V, Tの間に、次の2つの法則が成り立っています。
- 温度一定の条件で、圧力と体積が反比例の関係にある(ボイルの法則)$$PV = \mathrm{const.}$$
- 圧力一定の条件で、温度と体積が比例の関係にある(シャルルの法則)$$V \propto T$$
これらはいずれも実験で導かれた関係です。
通常は、これら2つの関係を合わせて「ボイル・シャルルの法則」と呼ばれます。
さらに理想気体は、温度T, 体積V 一定で系の気体の量(つまり、気体分子の数N)を2倍、3倍、…と増やしていくと、圧力Pも気体分子数Nに比例して2倍、3倍、…と増加することが分かっています。
$$P \propto N$$
これを「ボイル・シャルルの法則」と組み合わせると、理想気体の状態方程式が得られます。
理想気体の状態方程式
ちなみに、ここで突如出現した定数kは、「ボルツマン定数」と呼ばれ、次の値を持ちます。(詳しくは、統計力学でお話しします。)
気体は通常、膨大な数の粒子が集まったものなので、「アボガドロ定数」を用いて物質量(mol)で表すと便利です。
もし、粒子が n [mol] あるとすると、先ほどの理想気体の状態方程式は、
と書くことができます。
この R は「気体定数」と呼ばれ、
という値を持ちます。
理想気体の状態方程式は、一番簡単な気体のモデルなので、色々な場面で使われます。
特徴と一緒に、ぜひ覚えておきましょう!
まとめ
本記事では、理想気体の状態方程式についてまとめました。
高校で習ったわ!って思うほどシンプルで当たり前な式ですが、そのシンプルさゆえ、ざっくり見積もりたい…という時や、次回説明する「粒子の体積」や「粒子の相互作用」の影響を調べるときの比較対象として重宝します。
最後に、理想気体の特徴と、状態方程式の形を確認しておきましょう。
理想気体の特徴
- 粒子が大きさを持たない
- 粒子同士が相互作用しない
理想気体の状態方程式
次回は、実在気体の状態方程式について見ていきます。