【熱力学】道具3 熱力学的平衡

はじめに

今週末はバタバタしていて更新できませんでしたが、本日より再度更新していきます。
本稿では、熱力学的平衡についてお話します。

熱力学に限りませんが、現実で起きる現象をイメージして、対応させて考えると理解が深まります。
今回の内容は、どちらも日常生活で体験する内容です。
ぜひ、身の回りの出来事と結びつけて考えてみてください。

熱力学的平衡とは?

そもそも「平衡」ってなんなの?ってお話からしていきたいと思います。
「平衡」とは、見かけ上、変化していない状態のことです。
高校で化学を習った方なら、既にご存知かもしれません。
「熱力学的平衡」の意味合いで説明するにあたって、もう少し丁寧に表現すると、次の2つが特徴になります。

  1. 履歴(それまでに経た状態)に依存しない
  2. 時間に依存しない

何のこっちゃ…。
日常生活における例を挙げて、それぞれどんな状態なのかを考えてみましょう。

1.履歴(それまでに経た状態)に依存しない

部屋のテーブルの上に、熱いコーヒーが入ったカップがあります。
このコーヒーカップを長い時間室温で放置しておくと、どうなるでしょうか?
コーヒーは冷めて、やがて室温と同じ温度になりますね。

冷たいコーヒーの場合でも同様です。
放置しておくとだんだんぬるくなり、やがて室温と同じ温度になります。

仮に途中で温め直してからもう一度室温で放置しても、最終的には必ず室温と同じ温度になります。

このように、長い時間部屋に放置したコーヒーは、最初の温度や、途中で加熱したかどうか(=履歴)とは一切関係なく、最終的に室温と同じ温度になります。
このとき、このコーヒーは、室温と同じになるまでにどんな温度だったかという情報は、すっかり失われてしまっています

これが、履歴(それまでに経た状態)に依存しない状態です。

2.時間に依存しない

一度室温と同じ温度になったコーヒーは、何も操作しない限り、ずっと室温のままです。
勝手に室温よりも上がったり下がったりすることはありませんよね。
このように、時間に依存しないというのは、温度や圧力、密度などの量が、「時間が経っても変化しない」と言うことを意味しています。
ただし厳密には、とても小さい時間で見ると、それらの量には非常に小さな揺らぎが見られます。

コラム:非平衡系について

「平衡」の反対が非平衡です。
非平衡系では、温度や圧力、密度などの量が、時間に伴って変化します。
この「時間」の長さは様々で、数秒で変化するものから数年かけて変化するものまであります。
非平衡系の有名な例が、ガラスです。
ガラスは、一見時間によらず何も変化しない状態(=平衡状態)に見えますが、実は何年という単位で少しずつ構造が変化しています。
そのことが良くわかる物があります。
正倉院に所蔵されている「瑠璃杯(るりのつき)」という国宝をご存知でしょうか?
これは、ガラスでできた非常に美しい青色の杯ですが、よく見るとところどころ白く曇っています。
千年以上の時の流れの中で、杯のガラスが流動して、構造が変わってしまったことでこのような状態になっているのです。
世の中には、他にも様々な非平衡系がありますので、ぜひ探してみてください!

まとめ

いかがでしょうか?
「熱力学的平衡」というたった一つのキーワードについて、かなり説明してしまいました。
最後にもう一度、熱力学的平衡の特徴についておさらいしておきましょう。

熱力学的平衡の特徴

  1. 履歴(それまでに経た状態)に依存しない
  2. 時間に依存しない

これらの特徴は、熱力学的性質を知るにあったって、問題を非常に扱いやすくしてくれます。
とても重要な特徴ですので、「熱力学的平衡」と聞いたらすぐにこの2つを思い出せるようにしておきましょう!
次回は「温度」について説明します。お楽しみに!

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