【熱力学】道具4 熱力学第0法則と温度

温度って何だろう?

温度」という概念は、熱力学において中心的な役割を果たします。
と言われてもピンとこないですよね…。
本稿では、「温度」とは一体何なのかを説明していきます。
具体的には、次の3つの項目について順に理解を進めていきましょう。

  • 熱的接触
  • 熱力学第0法則
  • 絶対温度

熱的接触

私たちの体には、「熱い」「冷たい」という、「温度」を感じ取る能力があります。
しかし、感覚は人によって違う上に、測って比べることができません。
そこで、誰もが測定して比較できる、「温度」という概念を定めることが必要となるのです。
では、どうやって決めましょう?
ここで思い出してほしいのが、「熱力学はエネルギーのやりとりを扱う学問である」ということです。
「温度」は、「エネルギーのやりとり」に着目することで決定されます。

例を挙げて考えてみましょう。
高温物体と低温物体を接触させるとどうなるでしょうか?

これらの物体の間でエネルギーのやりとりが行われ、高温物体の温度は下がり、低温物体の温度は上がります。
そして、この温度変化は、二つの物体の温度が同じになるまで続きます。この状態は熱平衡状態になっています。
この互いに等しくなろうとする性質は、温度の最も重要な性質です。

このように、エネルギーのやりとりを許した接触を、「熱的接触」といいます。

熱力学第0法則

…何やら格好つけた名前の法則が出てきましたね。
熱力学では、第0法則から第3法則までの、全部で4つの法則が出現します。
第1法則以降についても、いずれ出てきますので、楽しみに(?)していてください!

では早速、熱力学第0法則の定義を確認しましょう。

熱力学第0法則の定義

物体AとBが熱平衡状態にあり、物体AとCが熱平衡状態にあるならば、物体BとCも熱平衡状態にある。

もはや当たり前って感じですね。
第0法則によって、熱平衡状態にある系は同じ「温度」という特性があることを認めています。

この法則を使って温度を知る道具が、皆さんもご存知の「温度計」です。
測りたいものと温度計を熱的接触させて熱平衡状態にして、対象物の温度を知っているのです。

コラム:温度計はなぜ小さいの?

先ほど述べた通り、温度計は、温度計と測定対象を熱的接触させ、熱平衡状態にすることで温度を測定しています。
もし、温度計が測定対象よりも大きかったら、どうなるでしょうか?
熱平衡状態になるとき、測定対象と温度計の温度は、それぞれ同じ温度になるまで変化します。
このとき、温度計が大きすぎると、測定対象の温度が温度計の温度に引きずられて大きく変化し、元の温度が分からなくなってしまいます。
そのため、測定対象の温度が可能な限り変化しないように、温度計は小さく作られているのです。

 

絶対温度

身近にある温度計には、水銀やアルコールなどが使用されています。
(水銀温度計については、水銀が人体に有毒であることから、最近ではほとんど見なくなりました…。)
同じものの温度をこれらの温度計で測定したとき、どちらも同じ温度を示しますよね。
このように温度を一意的に扱うためには、異なる温度計を使用しても、測定結果がお互いに一致しなくては使いものになりません。
そのためには、何か標準となる温度計を決めて、参照する温度を定義する必要があります。

そこで登場するのが、絶対温度(理想気体温度)です。
これは、理想気体の温度は圧力に比例するという事実に基づいて決定されています。
ここで、「理想気体」というのは大きさを持たず、相互作用しない粒子からなる気体のことです。
(詳細は次回以降の投稿で説明します。)
この温度の単位は「ケルビン(K)」と呼ばれます。
「あれ?温度の単位って『℃』じゃないの?」と思った方、『℃』についてはこの後説明します。

さて、この絶対温度ですが、「温度が圧力に比例する」という関係をそのまま式にすると、次のようになります。

$$T(P) = aP + b$$

ここで、a, bは定数です。このa, bを決めていきましょう。

まずはbです。
理想気体では、圧力がP=0の時、温度はT=0となります。
したがって、b=0です。

次にaです。
こちらは、「水の三重点」から決めていきます。
水の三重点とは、「氷・水・水蒸気が全て共存する固有の温度」のことです。
三重点の温度は、273.16Kと厳密に定義されています。
従って、理想気体温度は、次のようになります。

$$T = 273.16\frac{P}{P_{tp}}$$

ここで、Pは理想気体温度計が示す圧力、Ptpは三重点の圧力です。

ちなみに、先程の273.16Kという値は、当時、氷点と沸点がちょうど100Kになるように決められました。
現在はより正確に測定できるようになり、氷点は273.15K、沸点は373.12Kであることが分かっています。

この理想気体温度ですが、普段の生活では使っていませんよね。
もし使っていたとしたらどうなるでしょうか。

「今日の気温300Kらしいよ。」
「え!あんた312.16Kも熱あるの!?病院いきなさい!」

見たい温度範囲に対して273.16Kがあまりにも邪魔ですね。

私たちが普段の生活で使用するのは、水が氷になったり沸騰したり、せいぜいその程度です。
じゃあ、「氷点273.15Kを引いて、邪魔な部分を消しちゃえ!」ということで生まれたのがこちらです。

$$T_{celsius} = T – 273.15$$

これは、「セルシウス温度」と呼ばれ、温度記号「」を使用して表されます。
まさに、私たちが普段使っている温度ですね。
ちなみに、式の通り、理想気体温度とセルシウス温度は、0の位置が違うだけで、温度間隔は全く同じです。

まとめ

今回は「温度」について解説しました。
温度は「熱力学第0法則」と密接に関わっていること、そして「絶対温度」の定義を理解していただければOKです。

次回は、いよいよ「状態方程式」に入っていこうと思います。
数式が増えますが、頑張りましょう!

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