はじめに
さて、いよいよ本題に入っていきたいと思います。
本稿からは、熱力学の「基礎知識」についてまとめていきます。
今回取り扱う内容は、次の2つです。
- 「系」と「外界」
- 「孤立系」「閉鎖系」「開放系」
いずれも今後何食わぬ顔で当然のように出現するため、ぜひ押さえておきましょう!
「系」と「外界」
熱力学を扱うにあたって、まず最初に、着目する「系」を選択する必要があります。
……ちょっと待って!?「系」って何?!
熱力学を学習していると、至る所で「系」という言葉が出てきます。
この「系」とは一体何者なのでしょうか?
「系」を簡単な図で表すと、下の図のようになります。
それぞれの部分を簡単に説明すると、
- 系 :考察したい対象
- 外界:「系と影響しあう」系以外の残りの全部分
- 境界:系と外界の境目
となります。
これらの意味をわかりやすくするために、具体例を挙げていきましょう。
水の入ったコップに氷を一粒入れるとします。
氷粒に対して水がたくさんあるとき、コップの水の影響がとても大きいので、コップの外の空気の影響は無視することができます。
このとき、系・外界はそれぞれ、
- 系 :氷粒
- 外界:コップの水
となります。
非常にシンプルですね。ちなみに、コップは「境界」に対応します。
ここで、「外界」は「系と影響しあう」というところが非常に重要です。
先ほどの例で、水の入ったおちょこに氷を一粒入れる場合を考えてみましょう。
このとき、水と氷粒が同じくらいの量ですので、コップの外の空気の影響を無視することができません。
この場合は、
- 系 :氷粒 + おちょこの水
- 境界:部屋の空気
となります。
このように、興味のある対象が何であるかや、大きさの程度によって、「系」の定義は全く違うものになります。
どうでしょうか?なんとなくイメージできたでしょうか?
孤立系・閉鎖系・開放系
さて、この「系」は、ある特徴に応じて3つに分けることができます。
その特徴とは、「系と外界の間で『エネルギー』と『物質』のやりとりができるかどうか」です。
やりとりができるものを○、できないものを×として表にまとめたものがこちらです。
エネルギー | 物質 | 例 | |
孤立系 | × | × | 宇宙 |
閉鎖系 | ◯ | × | 缶詰め、レトルトパウチ |
開放系 | ◯ | ◯ | 窓を開けた部屋、石油ストーブ |
閉鎖系は、「密閉されたもの」、開放系は、「密閉されていないもの」が該当します。
私たちが知る世の中の全てはこれら2つの系からなっています。
孤立系は、その外側と一切のエネルギーのやりとりが起こらない系です。この世界では、唯一「宇宙」のみが該当すると言えます。
やっぱり宇宙って、不思議な存在ですね。
まとめ
「系」のお話、いかがだったでしょうか?
最後に、本稿で重要な点をもう一度まとめておきましょう。
- 系 :考察したい対象
- 外界:「系と影響しあう」系以外の残りの全部分
- 境界:系と外界の境目
エネルギー | 物質 | 例 | |
孤立系 | × | × | 宇宙 |
閉鎖系 | ◯ | × | 缶詰め、レトルトパウチ |
開放系 | ◯ | ◯ | 窓を開けた部屋、石油ストーブ |
これらはいずれも、今後熱力学を学習する上で「ひらがな」レベルの基礎となるので、ぜひ理解しておきましょう!
次回は「熱力学的平衡」について説明します。